島根県高校野球データベース夏季特別展

特別展「夏 -2023-」

1章 「スコア」って何だ?

 スコアは野球の試合で起こった出来事を記録するものです。よく高校野球のベンチで制服を着た生徒が紙とペンを握っている様子がテレビに映ることがありますが、彼らが記録しているものがスコアです。
 島根県高校野球データベースでは、主にスコアを所蔵品として取り扱っています。実はスコアといっても様々な種類や得意とする用途があるんです。「何で普通のスコアを書かないの?」とか「スコアって何種類もあるの?」とか「スコアの歴史は?」なんていう疑問にお答えします。

 

スコアの種類

 先程の歴史の中で紹介したように、スコアは大きく「早稲田式」と「慶応式」、「千葉式」、「ログ状」の4種類が使われています。その他の記載方法も含めて、各記載方法の簡単な見本とともに特徴を説明します。

ログ状

来歴

○2010年以降

スマホなどの普及に伴いプロ野球速報などで普及

主な用途

○デジタル機器への速報

書き方の特徴

 書き方は少し野球を知っていれば全て分かるような書き方を文章でしてくれます(他の種類のスコアも同じ展開を書いています)。

成績

(5:良/簡単 3:普通 1:悪/難 0:不明)

・書く難易度

・普及率

・1人で記録できる情報量

:5

:4

:2

・整理しやすさ

・用紙の入手しやすさ

 

:1

:5

 

利点

○誰でも読みやすい

○書くスペースに限りが無いため、書き足し易い

○同じ回の攻撃で打者1巡しても書く場所に困らない

欠点

○前の打席の結果などがわかりにくい

○打者の巡りが多い試合になると、必要な紙の枚数が増える。

○ひと目見て自責点や残塁が分からない

「ログ状」スコア見本

「ログ状」スコア

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早稲田式

来歴

○1925年

飛田穂洲(忠順)氏が『最新野球規則詳解』の中で紹介

主な用途

○ベンチや偵察、記者の記録と広く使われている

書き方の特徴

 用紙に補助線が引いてあり、右下から反時計回りに1塁、2塁、3塁、本塁と記録を書きます。補助線の真ん中にはアウトの場合ローマ数字で1~3の数を、残塁はを得点(自責点)は、得意(自責点なし)はを書きます。ヒットは赤など色分けして記載すると見やすくなります。

成績

(5:良/簡単 3:普通 1:悪/難 0:不明)

・書く難易度

・普及率

・1人で記録できる情報量

:4

:5

:3

・整理しやすさ

・用紙の入手しやすさ

 

:5

:5

 

利点

○広く普及している

○裏表の用紙1枚で1試合が完結する

○前の打席の結果などがわかりやすい

欠点

○単色だと、ややわかりにくい

○投球に関して書く場所が小さい
→詳しく書くなら別紙必要

○盗塁などは工夫を加えないと順序が見づらい

「早稲田式」スコア見本

「早稲田式」スコア

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慶応式

来歴

○1910年

 

○1936年

『現行野球規則』の中で直木松太郎氏が考案した「野球試合記録法」を紹介。「慶応式」の基となる。

山内以九士氏が修正を加えた記録法が『最新野球規則』の中で紹介される

主な用途

○プロ野球の公式記録に使われる

書き方の特徴

 用紙の特徴は「早稲田式」と異なり補助線が一切ありません。「慶応式」は右上から1塁、2塁、3塁、本塁と反時計回りに記載します。また、打者についても1番をa、2番をb・・・9番をiとローマ字で記載します。また、安打の際は上に「く」の字を書いて打球の位置と種類を書きます。アウトの際は分数のように書きます。分母にあたる下側がアウトカウント、上側がプレーを示しています。

成績

(5:良/簡単 3:普通 1:悪/難 0:不明)

・書く難易度

・普及率

・1人で記録できる情報量

:3

:2

:4

・整理しやすさ

・用紙の入手しやすさ

 

:5

:3

 

利点

○「早稲田式」よりも詳しく記録できる

○単色で書いてもわかりやすい

○裏表の用紙1枚で1試合が完結する

○前の打席の結果などがわかりやすい

欠点

○「早稲田式」よりも覚える記号の数が多い

○投球に関して書く場所が小さい
→詳しく書くなら別紙必要

○盗塁などは工夫を加えないと順序が見づらい

○「早稲田式」よりも用紙の入手が困難

「慶応式」スコア見本

「慶応式」スコア

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千葉式

来歴

○1970年前後

千葉県高校野球連盟の第5代理事を勤めた廣川善任氏が発案したとされる

主な用途

○千葉県の高校野球

書き方の特徴

 「千葉式」は「早稲田式」と「慶応式」の良いところを組み合わせた書き方です。用紙は「早稲田式」のものを使います。マス目の使い方も「早稲田式」となっています。ただし、進塁した際の書き方が打者の打順を漢数字で書き記し、本塁生還時には( )内に漢数字を記します。これは「千葉式」独自の特徴です。出塁せずにアウトとなった打者は補助線を無視し、「慶応式」のような分数で記録します。

成績

(5:良/簡単 3:普通 1:悪/難 0:不明)

・書く難易度

・普及率

・1人で記録できる情報量

:3

:2

:4

・整理しやすさ

・用紙の入手しやすさ

 

:5

:5

 

利点

○単色で書いてもわかりやすい

○裏表の用紙1枚で1試合が完結する

○前の打席の結果などがわかりやすい

○用紙が入手しやすい

欠点

○投球に関して書く場所が小さい
→詳しく書くなら別紙必要

○盗塁などは工夫を加えないと順序が見づらい

○広く普及していない

「千葉式」スコア見本

「千葉式」スコア

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その他

主な用途

○打席の結果の確認

書き方の特徴

 上記のような種類以外にも、打席の結果だけを書き記したものなどもあります。実際、これだけで試合の全容を追うには不完全ですが、こういったものも広義のスコアに当てはまります。

成績

(5:良/簡単 3:普通 1:悪/難 0:不明)

・書く難易度

・普及率

・1人で記録できる情報量

:0

:0

:1

・整理しやすさ

・用紙の入手しやすさ

 

:0

:5

 

利点

○気軽にスコアをつけやすい

欠点

○試合の全容を追うには不完全

「島根県高校野球データベース式」のスコア

 島根県高校野球データベースでは、1人でより詳しいスコアを記録するために、オリジナルのスコアを用いています。ログ形式を基にしたため、時系列で理解しやすいです。記載範囲に縛られない特徴を生かし、打球の位置や強さ、投球コースを記号化することで1人で同じ紙に、より詳細な情報を記載できるようにしたスコアです。基本の書き方は「早稲田式」と共通する所もあるため、野球のスコアに関して多少の知識がある方なら誰でも読める内容となっています。安打は赤色、失策や野選は青色、四死球と犠打飛は緑色で記載しておおり、視覚的にも見易くなっています。

 利点は1人で情報を詳しく記載できる点です。少人数での偵察などには向いています。欠点は、整理作業が大変なことと、打者の前の打席結果を覚えていないといけないことです。試合中のベンチでは前の打席の結果を見ることが重要なため、向いていません。投球コースを記載しない方は通常のスコアをオススメします。

島根県高校野球データベース式

主な用途

○1人で多くの情報を記入できる

書き方の特徴

 上記のような種類以外にも、打席の結果だけを書き記したものなどもあります。実際、これだけで試合の全容を追うには不完全ですが、こういったものも広義のスコアに当てはまります。

成績

(5:良/簡単 3:普通 1:悪/難 0:不明)

・書く難易度

・普及率

・1人で記録できる情報量

:1

:1

:5

・整理しやすさ

・用紙の入手しやすさ

 

:1

:1

 

利点

○1人で多くの情報を記入できる

○時系列で書くのでわかりやすい

○書くスペースに限りが無いため、書き足し易い

○同じ回の攻撃で打者1巡しても書く場所に困らない

欠点

○前の打席の結果などがわかりにくい

○打者の巡りが多い試合になると、必要な紙の枚数が増える。

○ひと目見て自責点や残塁が分からない

○広く普及していない

「島根県高校野球データベース式」スコア見本

「島根県高校野球データベース式」スコア

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「島根県高校野球データベース式」
スコア説明書

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---↓気になる人は歴史も頑張って読んでみてね!---

スコアの歴史

 日本でのスコアの始まりと言われているのは、第一高校(現、東京大学)が記録をつけたものだと言われています。1896年(明治29年)の試合のスコアが残っており、得点をO、残塁をS、アウトをXなどといった記号で記録しているが詳細は不明といった内容のものでした。

 1910年(明治43年)、アメリカの野球規則を翻訳した『現行野球規則』の中で直木松太郎氏が考案した「野球試合記録法」紹介されました。これが「慶応式」と呼ばれるスコアの基本となりました。「慶応式」の名前の由来は、松木氏が慶応大学でスコアラーや指導者を務めていたからだと考えられています。その後、直木氏に師事した山内以九士氏が修正を加えた記録法が、1936年(昭和11年)に『最新野球規則』の中で紹介されました。また、山内氏考案の記録方法に適した記録帳である『ヤマウチ式野球記録帳』を同年12月に発行しされました。同年には日本プロ野球もスタートし、山内氏の執筆した『最新野球規則』がルールの基とされています。山内氏は1942年に公式記録員となると、1936~1949年の一リーグのスコアを全て「ヤマウチ式」に清書し保存していました。その後、山内氏がパリーグ記録部長に就任したことなどから、現在でもプロ野球の公式記録員は「慶応式」のスコアを採用しています。

 現在、私たちがスコアと聞いて思い浮かべるものは「早稲田式」といいます。「早稲田式」のスコアは、1925年(大正14年)に飛田穂洲(忠順)氏が『最新野球規則詳解』の中で紹介しました。飛田氏が早稲田大学の監督を務めていたことが「早稲田式」の由来となっています。その後、飛田氏が朝日新聞の記者となったことで、マスメディアは「早稲田式」を使うようになりました。この「早稲田式」が一般に普及し、日本では最も一般的なスコアの書き方となっています。

 千葉県の高校野球では「千葉式」と呼ばれる独自のスコアを使っています。1970年前後に千葉県高校野球連盟の第5代理事を勤めた廣川善任氏が発案したとされ、詳しくは後述しますが「早稲田式」と「慶応式」を組み合わせたものとなってます。

 2010年代になるとスマートフォンやタブレット端末が普及すると、プロ野球の速報などを中心にアプリケーションやブラウザ上で誰でも時系列順に試合展開が分かる、「ログ状」のスコアが普及しました。更に記録手段も様々なIT技術の進歩により、電子機器によるデジタル化が進んでいます。

参考文献

 

 次の章からは、各ゾーンごとのスコアを展示しています。

第105回選手権島根県大会
の組み合わせ/結果

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